1)乳がんが心配な方へ
@乳房の症状があるかた
乳房やわきの下に硬いしこりがある、血液の混じった乳頭分泌がある、乳房の痛みなどの症状があるかたは、
まず、しこりの位置や大きさ・硬さ、乳頭分泌の出る場所・量・色、痛みの特徴、生理との関連がないかどうか
、などを確認してみましょう。このような症状のある方は乳がんをご心配されていると思いますが、
乳がんではなく、嚢胞(のうほう)や線維腺腫(せんいせんしゅ)、乳管内乳頭腫(パピローマ)などの良性疾患と診断される方も多いので過剰に心配されませんように。
とくに、痛みや乳房の張り感が強いわりにはしこりは良く分からないという方は乳がんではなく、
月経周期にともなう乳房の正常な変化である可能性が高くなります。でも、専門医の診察をうけずに自己判断は危険です。
もし、乳がんであっても適切な治療により治癒が期待できますので、とにかく心配な方は早めに診察をうけてみませんか。
A症状はないけれど、家族や友人に乳がんになられた方がいて心配なかた
まず、自己検診をしてみましょう。
仰向けに寝て、乳房を平たくしてから反対側の手の指先のはらを使って丹念に乳房内に硬いしこりがないか触ってみましょう。
次に、立位で鏡をみて不自然な左右差や、皮膚の引きつれや乳頭の引き込みがないか、
乳頭の先をつまんで分泌がないか、も確認しておきましょう。
何もなければひと安心ですが、年齢が30歳を超えている方は、年に一度はマンモグラフィや超音波検査による乳癌検診をお受けになると良いでしょう。
一般的には、乳房に張りのある若い方には超音波検診、閉経後で乳房が柔らかくなった方にはマンモグラフィ検診が向いていますが、
個人差もあるので一概にはいえません。一度、専門医の診察を受けて、あなたにあった検診方法を尋ねてみるとよいでしょう。
また、お母様や姉妹に乳がんになられた方がいらしても、それだけであなたの乳がん発病リスクが倍増したり、
あなたの子孫に乳がんが遺伝していくわけではありません。日本人女性の3人に一人は何らかのがんにかかりますし、
乳がんは60代以下の女性で一番かかりやすいがんなのです。また、乳がんは他のがんよりも治りやすいので、
乳がんを克服して長生きされる方(サバイバー)の割合が高いので、身辺にはたくさんの乳がんサバイバーの方がいらっしゃることでしょう。
一方、女性の親族のほとんどが乳がんや卵巣がんにかかっているという方は、遺伝性の可能性が高いと思われます。
ご親族のがん治療を担当されている医師に相談されると良いでしょう。
B乳がんの診断をするために必要な検査
視触診、マンモグラフィ、超音波検査を行ないます。
しこりや異常な影が同定できれば、直接その患部をねらって注射針を刺し、
細胞や組織を体外に取り出して顕微鏡で検査する「細胞診」や「組織診」をすることで診断が確定されます。
詳しくは日本病理学会の「病理診断ってなあに」http://jsp.umin.ac.jp/public/pathdiag.html
もご覧ください。
当院では、NPO法人精中委http://www.mammography.jp/
の認定を受けた、経験豊富な女性の医師・レントゲン技師・超音波検査士が連携して診療にあたっています。どうぞ安心して検査をお受けください。
乳がんが疑われるのに患部が通常の検査では確認できない場合には、他院でMRI検査や乳管内視鏡などの特殊検査をお受けいただくこともあります。
C乳がんと診断されたら
細胞診や組織検査でがん細胞が確認されたら、どの程度進行した乳がんであるのかを調べる画像検査(乳房MRI・骨シンチ・CT検査など)と、
あなたの体力検査(心電図・肺活量・血液検査など)を行います。どちらも治療方針を決定するために欠かせない検査です。
当院では、乳がんの診断がついた時点で、ご希望の治療施設へ検査と治療を依頼しています。
これまでに、ご紹介した施設は、荏原病院、亀田総合病院、癌研有明病院、国立がんセンター中央病院、
聖路加国際病院、順天堂大学、順天堂医院、東邦大学大森病院、聖マリアンナ医科大学附属病院(あいうえお順)などですが、それ以外の施設へも可能です。
2)これから乳がんの治療を受ける方へ
何らかの症状があった方は、「もしかしたら乳がんかも・・」と予測はしていても、実際に病名を告知されるとかなり動揺されているでしょうし、
全く症状がなくて検診で見つかったという方も、まさか!という感じで「なんで私が乳がんに・・?!」と思っていらっしゃることでしょう。
告知を受けた直後は、多くの方が「頭の中が真っ白になった」、「説明は聞いたけどぜんぜん覚えていない」とおっしゃっています。
しばらくすると(数日から一週間程度)、なぜなぜ・・から、じゃあどうすればいいの、という気持ちになり、
検査や治療についての情報も受け入れられるようになってきて、きちんと治療を受けてみようという気になってくるから不思議です。
中には、自分が乳がんになったという現実が受け入れきれず、一時的に引きこもってしまう方もいらっしゃいますが、
そんな方も2-3週間もすれば、前向きな気持ちになられるようです。自覚症状がないか、あっても小さなしこりであれば、
1ヶ月程度の引きこもりやうつ状態のために検査や治療が遅れても、その後の治癒率には余り影響はありません。
むしろご自身が病状を受け入れ、検査や治療を納得して受けることのほうが重要ではないでしょうか。
でも一ヶ月以上の引きこもりは、心療内科でのカウンセリングなどの専門的治療も同時に受けるほうが良いでしょう。
では、乳がんの治療方法について
あなたの病気の程度と体力状態を考慮して、以下の3つの治療法を組み合わせるのが一般的です。
@手術:乳房の病巣とわきの下のリンパ節を取り除く目的で行われます。病巣の位置や大きさだけでなく、
乳房の大きさとのバランスも考えて乳房全体を切除するか、部分的に切除する(乳房温存術といいます)検討します。
病巣が大きい場合には手術の前に薬物療法で小さくしたり、薬剤の効き目を確認することもあります(ネオアジュバント治療や術前薬物療法といいます)。
また、わきの下のリンパ節も乳房と同時に切除されるのが一般的ですが、腕のむくみや痛みなどの後遺症がおこることもあるため、
最近は明らかなリンパ節転移のないかたにはセンチネルリンパ節生検を行うことが多くなっています。
センチネルリンパ節生検とは、いちばん転移しやすいリンパ節への転移を手術前か手術中に調べる検査です。
転移がなければその他のわきの下のリンパ節は残します。はじめからリンパ節転移が明らかな方は従来どおりリンパ節を全部切除するか、
術前薬物療法を行います。
A薬物療法:抗がん剤・ホルモン剤・分子標的薬の3種類があります。
乳がん細胞は、発見されたときにはすでに乳房やリンパ節以外の血液中や骨・内臓などにも散らばっていることがあり、
手術で病巣を切除しても、その後に散らばっていたがん細胞が大きく育ってしまう可能性があります。
そこで、全身にいきわたる薬物療法により、それらの細胞を根絶し、乳がんの再発を防ぐのです。
がん細胞の性質を針生検や手術で取り出したがん組織で詳しく調べてから、より効果の高い薬剤を組み合わせて使います。
薬剤ごとに副作用もあり、個人差もあるので、あなたの病気だけでなく体力や体質を考慮した治療を受けることが重要です。
B放射線治療:放射線を照射した部位の細胞にダメージを与えるので、手術で取り残されたごく少量のがん細胞を根絶します。
放射線があたった部分の正常細胞も影響を受けるので、皮膚炎や乳房の萎縮がおこることがあります。
放射線は一度に大量あてると正常細胞へのダメージが強すぎるので、通常は少量づつ25回から30回に分割して予定線量を照射します。
乳房温存術で残った乳房や、がんが大きくてリンパ節転移の個数が多かった方の胸部や鎖骨付近に再び乳がんができないように予防するために必要な治療です。
他にも、様々な研究段階の治療や民間療法もありますし、期待に基づいた効果だけを強調した情報はあふれています。
でも、きちんと効果が立証され、安全な副作用対策が講じられるのは上記の3つだけです。
治療法に迷っていらっしゃる方は、賢明な選択のために乳がん治療の専門スタッフがお手伝いさせていただきますので、どうぞ遠慮なくご相談においでください。
3)乳がんの治療を受けた方へ
検査・手術・薬物療法・放射線療法では心身ともにきつい思いをされたことでしょう。お疲れ様でした。
きちんと治療が完了し、すっかり気分・体力ともに回復した!という方は、過剰に病気の再発を恐れる心配はないでしょう。
忘れずに年に一回の反対側の乳がん検診を受けていきましょう。
適度な運動と良質の食事を心がけ、リラックスや睡眠時間も十分とる生活に努めましょう。
でも、治療からもう数ヶ月たつのになんとなく体調がすぐれない方、後遺症や副作用かしら・・とお悩みの方は一度ご相談ください。
乳がんの治療後に、何をするにもおっくう・わすれっぽい・物悲しいなどのマイナス思考が続く方はたくさんいらっしゃいます。
お話する時間をとるだけで良くなることもありますし、心療内科などで専門的カウンセリングやお薬の助けが必要な方もいらっしゃいます。
腕のむくみや肩こりなどの手術後のリハビリには当院併設のメディモアでのパーソナルトレーニングがおすすめです。
特にホルモン治療を受けている方には、骨粗鬆症に注意する必要がありますし、
手術後の肥満は乳がん再発のリスクを高めるため体重管理は重要です。
手術によるきずのケロイドや、乳房の変形は、圧迫療法や乳房再建などの形成外科的な治療で改善することがあります。
また、ホルモン剤や放射線療法でせっかく残した乳房が萎縮してしまった方には思い切って豊胸手術もおすすめです。
当院では、あなたの乳がんの状態にあった美容的なカウンセリングも可能です。
手術を受けた病院がいつも混みあっていて決まったくすりを処方してもらうだけなのに何時間もかかる、
聞きたいことも聞けない、という方は、診療情報提供書(紹介状)をいただければこちらでも薬剤の処方や点滴、医療相談を受けることができます(乳癌治療施設からの逆紹介)。
また、なんだか主治医と気が合わないなーと思っているうちに治療も検査も中断してしまった・・という方はいらっしゃいませんか。
せっかくの治療が中途半端で終わってしまってはもったいないので、引き続き出来る治療をこちらでアレンジいたします。
できる限りの病気の情報を持っておいでください。
4)若年性乳がんの方へ
当院では、乳がんという病気だけではなく、その人自身のことを考えた乳がん診療を心がけています。
特に20代から30代前半で乳がんになられた方は、まだお子様が小さい、勉強や仕事が忙しい、
これから結婚・出産を考えていた・・など病気以外のことでも悩みや不安がつきないと思います。
最近、わが国の乳がん患者数は増え続けているのですが、患者全体に占める若年者の割合は数パーセントと少ないため、
全国的な若年性乳がんの統計データや、術後の結婚・出産・就業に関する情報は限られています。
でも、おひとりおひとりにあった意思決定のお手伝いを当院の家庭医・婦人科医とも連携してさせていただきますので、
これからの人生設計で迷っていらっしゃるかたは、ご相談ください。
とくに、治療後のパートナーとの関係(セクシャリテイ含む)・子供のケア・出産に関しては専門的な研究実績がありますので、ご安心ください。
5)乳癌治療相談
(2)、(3)、(4)で書いているように、他院で乳がんの診断を受けてこれから治療予定だけれど受け入れきれない、
説明の意味が良く分からない、治療法がこれで良いのか迷っている、などの方にはセカンドオピニオンをお受けしております。
できるだけ診療情報(紹介状や画像検査フィルムなど)をお持ちください。また、すでに乳癌の手術や治療も済んだけれど、
なんだか元通りの自分に戻れないで困っている方や、治療後の仕事・結婚・出産といった生活設計への心配のあるかたもどうぞ。
乳がんホルモン治療中の更年期障害、化学療法中の副作用対策やファッション・メイク・職場や家庭での人間関係、
また、乳房再建手術や豊胸手術を検討されている方のご相談にのります。
腺維腺腫:
良性の乳腺腫瘍です。10代後半から30代の女性に多く発症しますが50代でも認められることがあります。
良性であるため、身体の他の部分に拡がることも、生命を脅かすこともありません。
診断
触診・乳房撮影(マンモグラフィー)・乳房超音波検査(エコー)の所見と、細胞診または組織診で診断されます。
治療
良性疾患であり、多くの場合は経過観察のみで治療の必要はありません。しかし、3cmを超えて急速に大きくなっていく場合は、
1.悪性細胞が混在している危険がある
2.乳房につける傷が大きくなる
の理由から摘出することが勧められます。
手術(しこりの摘出)は局所麻酔で行います。しこりと同じくらいの傷がつきます。(3cmのしこりの場合は3cmくらい)。
自己検診
1ヶ月に1回大きさをチェックして下さい。大きさが変わらなければ心配いりません。
急速に大きくなってきた場合や3cmを超えた場合は再診してください。
http://nyugan.info/allabout/qa1/qa1_6.html
もご参考に。
乳腺症:
30代から40代の女性に多い良性の乳腺疾患です。女性ホルモンの影響による正常な乳腺の生理的変化とも考えられます。
乳腺が張る、痛いといった症状の方の多くは、乳腺症と診断されます。
原因
乳腺の増殖性変化と退縮性変化とがまじりあってみられるもので、女性ホルモンがバランスを崩したことが原因と考えられます。
症状
乳腺のしこり、痛み、硬さ、乳頭分泌などの症状がみられます。月経前に症状が強くなり、月経後は軽快することも多くみられます。
経過
月経がなくなる50歳くらいになると、自然と症状がなくなっていくことが普通です。
治療
乳腺症とは病気ではなく、正常の変化の少し強い状態なので、特に治療の必要はありません。
痛みが長く続く場合は痛み止めを内服します。それでも症状が強い場合はホルモン療法を行う場合があります。
注意点
乳腺症は乳がんの原因となることはほとんどありませんが、乳がんを発見しにくい場合があるので、
1年に1回の地域や会社などでの乳がん検診を受けて下さい。
乳腺嚢胞(のうほう):
乳腺嚢胞(のうほう)とは乳腺内に液体が袋状に貯まった状態です。
基本的には良性の変化で乳腺症の範疇に含まれます。
原因
乳腺嚢胞の出現には卵巣ホルモンの働きが関与しています。
乳腺の基本構造である乳管一小葉構造のうちの小葉に変化が起き、小葉内の腺房が拡張して小さな嚢胞となり、
それが元になって大きな嚢胞が形成されます。
40代から50代前半の方にしばしば認め、正常な人でも小さな嚢胞は60%の方に、
1cm以上の嚢胞は20%の方に見られるといわれています。
症状
嚢胞はおおきくなると丸いしこりとして触れ、圧痛を伴うこともあります。
検査
嚢胞の存在自体にはさほど病的意味はありません。
しかし、乳癌が原因で嚢胞ができることがあるので乳房撮影・超音波、必要であれば細胞診などの検査を行います。
治療
嚢胞が将来乳癌に移行することなく、1年に1回地域や会社などで検診を受けることで十分と考えられます。
1) 他院で乳がんの診断を受けてこれから治療予定だけれど、受け入れきれない、説明の意味が良く分からない、治療法がこれで良いのか迷っている
2) 乳がんの治療中の副作用(更年期障害、脱毛、肌荒れなど)で困っている
3) すでに乳がんの手術や治療も済んだけれど、家庭や職場での人間関係がギクシャクしてなんだか元通りの自分に戻れないで困っている
4) 治療後の仕事・結婚・出産といった生活設計を相談したい
5) 手術後の乳房の変形が気になり、乳房再建をうけようか悩んでいる
6) 乳房のしこりや痛みがあり他院で乳がんではないといわれたけれど、詳しい説明がなく本当にこれでよいのか不安を感じている
7) 豊胸・乳房縮小・陥没乳頭の手術など美容外科手術を受けようか迷っている
8) 授乳相談
など、乳房に関するお悩みのある方のご相談にのります。原則として事前のご予約が必要ですが、お急ぎの方はご相談ください。医療情報提供書やレントゲン資料などがあればお持ちください。